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英語圏のサッカーの戦術分析記事の翻訳ブログ

 
今回は近年アタランタを躍進させているジャン・ピエロ・ガスペリー二についての分析記事を訳しました。拙い英語力で訳していますので誤訳などあるかと思いますがご容赦ください。
 
元記事はこちら

totalfootballanalysis.com

 
ジャン・ピエロ・ガスペリー二
 
過去2年間でジャン・ピエロ・ガスペリー二より良い成績を残したと言える監督はほとんどいない。彼は昨シーズンアタランタを4位に導いた。そして現在も来年のヨーロッパの舞台への出場権を確保できる6位にいる。この間のアタランタは彼らの素早いパス回し、力強いプレッシング、トップチームに引き上げられた若手の数でヨーロッパで最も魅力的なチームのひとつだ。今回はガスペリー二が使っているコレクティブなマンマークを含めた卓越した効果的な戦術を考察していく。

 

ガスペリーニの好むフォーメーション

彼のイタリアのトップカテゴリーでのすべての指導期間中、ガスペリーニは3-4-3を駆使してきた。正確に言うと、3-4-2と3-4-1-2のふたつのフォーメーションを使い分けていた。主に自チーム又は相手のスターティングメンバーによって変わるが、この2年間は基本的に攻撃時は3-4-2-1だ。しかし守備の局面においてフォーメーションの話をするのは間違いだ。そのことについては後ほど。下の画像は通常の攻撃時のラインナップを表してる。

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アタランタのハイプレス

アタランタはイタリアで最もアグレッシブなチームのひとつで、ガスペリーニは選手達に相手を阻止するために高い位置でのプレスを指示している。スタッツがこれを証明している。アタランタは1試合あたり平均18.9タックルという数字を記録しているが、これはフィオレンティーナしか上回ることが出来ていない。同様にたった3チーム(ローマ、ナポリサンプドリア)だけがアタランタの351より少ないパスを1試合あたりに許した。これらのスタッツが彼らのプレッシングがいかに効果的で、彼ら相手にボールをキープするのが難しいか物語っている。さてどうやって彼らはこれを行っているのか?
アタランタのハイプレスは完全にマンマークで行っている。これはディ・フランチェスコのローマに似た方法だ。ガスペリーニの全体的なディフェンスの戦略は相手のマンマークなので、後ほど見ていくが、マンマークのプレッシングが採用されていることは驚きに当たらない。マンマークはリアクションになりやすい性質から、ガスペリーニは相手のメンバーをもとに彼のプレッシング方法を採用している。下で二つの異なるシナリオを見てみよう。
最初の例はインテル戦のものだ。インテルはこのゲームで3-2-4-1でビルドアップをしているが、これはガスペリーニインテルのスリーバックに対してファーストラインで前線3枚でプレスすることを意味する。アタランタのツーセントラルミッドフィルダーインテルのツーミッドフィルダーをマークして、ウイングバックが対面するインテルウイングバックをマークしていた。下のシーンでは、インテルの右ウイングバックCanceloが左ウイングバックのRobin Gosensにプレスされている。左フォワードのAlejandro Gomezがインテルの右センターバックをマークし。セントラルミッドフィルダーのFreulerがインテルミッドフィルダーのGagliardiniを中央でプレスしている。右フォワードCristanteがインテルの左センターバックをマーク。ストライカーのMusa Barrowがセンターバックへのパスを阻止しながら、ゴールキーパーへのバックパスの選択肢を消している。インテルはロングボールを蹴らされてアタランタがボールを回収する。

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 下は先週のジェノア戦。ガスペリーニジェノアの3-5-2に彼のプレッシング方法を適用した。どうやってワイドフォワードが相手のワイドに開いたセンターバックにプレッシャーをかけているかもう一度見てみよう。ストライカーのBarrowがカバーシャドウを使って彼を回避してセンターバックにパスする選択肢を消しながら、もう一度ゴールキーパーにプレスしている。アタランタミッドフィルダーのひとりがジェノアのプレイメーカーにプレッシャーをかけて、もうひとりがジェノアミッドフィルダーを捕まえると、またしてもウイングバックの直接対決になる。アタランタの中盤2人に対したジェノアは中盤3人、しかしアタランタの3人のディフェンダーに対して2人のフォワードしかいないので、必要であればアタランタセンターバックのひとりがジェノアの3人目のミッドフィルダーをマークできる。

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コレクティブなマンマーキング

上で記したように、ハイプレスを行わないときもガスペリーニはコレクティブなマンマークを展開する。それぞれの敵をマーク出来るように相手のポジションをもとに自身の選手を配置する。時にはスペースをカバーするために一人(たいていディフェンダー)をディフェンス時に余らせる。こういったマーキングではある程度の柔軟性があるのが普通だ、とくにディフェンダーが相手を受け渡して自分のポジションに留まる時などは。しかしいくつかの試合で彼らは相手がどう動こうが厳格なマンマークを行っている。このようなアプローチでは伝統的なひとつの固定されたシステムでディフェンスの形を語るのは困難だ。どちらかといえばこれは流動的なコンセプトだ。

 

構成の異なる3試合を見ていく。初めに4-3-3の卓越したパスサッカーで有名なナポリとの一戦。ガスペリーニは以下で見られるようにマンマークで彼らのビルドアップを阻止しようとした。彼はナポリの両センターバックミッドフィルダー3人すべてをマンマークする決断をし、前進するためのすべての中央の選択肢を排除した。取り残された両サイドバックがボールを受けようとした瞬間がボールサイドのウイングバックが押し上げる合図になっていた。このアプローチは昨年特に良く機能していたので、アタランタナポリにリーグ戦でダブルを達成した。

 

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前述したインテル戦はインテルの3-2-4-1システムによって違うシナリオを表している。下の画像で分かるように、これはアタランタと同じ形なのでそれぞれの選手が対峙する相手を見つけるのは容易だ。

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下は昨シーズンの4-2-3-1のユベントス戦だ。これはアタランタマンマークを最も興味深く、また極端に示した例かもしれない。このゲームでのストライカーGomezがBarzagliにプレスしている。アタランタがどのようにユベントスセントラルミッドフィルダーPjanicとKhediraをマンマークしているかはっきり見ることが出来る。ユベントスの右サイドバックが左ミッドフィルダーのKurticにマークされている。黄色で示された左センターバックAndrea Masielloがディフェンスラインを離れてボールに向かって降りていくDybalaについていく。

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下の画像ではボールを持ったPjanic がFreulerにマークされている。遠いサイドではKurticがまたユベントスの右のディフェンダーをマークし、左隅ではCristanteがKhediraをマーク。黄色で示されたMasielloのポジションを見てほしい。左センターバックなのにも関わらずハーフウェーラインを超えてDybalaをマークしている。黒で示されたアタランタの中央のセンターバックMattia Caldaraが中盤までGonzalo Higuain につく。ガスペリーニの指示がいかに厳密かが分かる。このことからディフェンスの陣形の形の話をするのはとても難しい。相手の動きによって絶えず形が変わる。

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下はユベントス戦のアタランタのアプローチの全体像をよく表している。この試合ではいつもとかなり違う構成だったのでフォーメーションで表すのは不可能だ。両翼にそれぞれ2人ずつディフェンシブな選手を配置している。写真上部で左ミッドフィルダーのKurticがユベントスの右バックDani Alves をマークし、左バックSpinazzolaが右ウイングのCuadradoをマーク。右サイドでも同じように、右ミッドフィルダーのHateboer が左バックAlex Sandro をマークし、右バックContiが左ウイングのMandzukicをマーク。黒で示されたふたりのセンターバックユベントスの前2枚をマークして3人目のセンターバックリベロとしてスペースをカバーする。そして2人のミッドフィルダーユベントスのデュオをマークする。ストライカーのGomezが片方のセンターバックにプレッシングしてもう一方のセンターバックをフリーにする。

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上の画像は、もしマークのミスがあった場合この構成がいかに脆いかを表している。青で示されたCristanteはKhediraを離してChielliniとボールに引き付けられている。Khediraはフリーでボールを受けてターンにして前を向く。これはピンチになっていてもおかしくないがこの場面ではそうはならなかった。もう一度センターバックのポジションに注目してみよう。何か前に見たことのある光景ではないだろうか?

マンマークはリアクションになってしまう性質があるにも関わらず、ガスペリーニマンマークは主体的である。アタランタがこの形になると相手チームはアタランタのやり方に合わせなければならなくなり、問題が生じるので相手にするのは脅威だ。現時点でアタランタが許した失点数36を上回るのはユベントスナポリ、ローマ、インテルだけなので、このやり方はうまく機能していると言える。エネルギッシュでアグレッシブなアタランタのプレッシングと彼らのコレクティブなマンマークはどのチームも相手にしたくないものにしていて、なぜディフェンスのスタッツが優れているのか説明している。

 

ガスペリー二のポゼッションの仕組み

ポゼッション中アタランタはとてもオーガナイズされ、良く準備されている。ポゼッション時3-4-2-1なのでウイングバックによって常に横幅を確保でき、中盤の中央で4人の選手が異なる高さを作り出せる。このボックスのミッドフィルダーによって相手のミッドフィルダーは自分達の前と後ろ両方で2人ずつを見ることになるので相手にとってさらなる問題が発生する。そのポゼッションの構造が下で示されている。

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アタランタは素早くて鋭いパス回しで後ろからのビルドアップを試みている。セントラルミッドフィルダーのひとりがサイドに向かって降りてきて、ウイングバックが作った空いたスペースでのボールの前進を助ける。2人の攻撃的ミッドフィルダーは基本的にそれぞれのハーフスペースにポジションをとり、ボールを受けたら素早くターンして前進する。アタランタのポゼッションの全体のアイデアはコントロールされた方法でボールを出来るだけ早く前進させることのようだ。しかしもしプレスされたらアタランタゴールキーパーもしくはディフェンダーのひとりからロングボールを蹴ることを躊躇しない。そしてストライカーもしくはCristanteを探してフリックするかセカンドボールを奪う。

 彼らはさらにポゼッションをコントロールするのにも長けている。平均ポゼッション率はセリエAで6番目だ。3人のセンターバックからのソリッドなビルドアップのベースを持っていて、また二人のミッドフィルダーカウンターアタックに対して安定したプロテクトを形成する。狙いはボールを素早くサイドに供給して、ウイングバックに攻撃するスペースと時間を与えることだ。下の画像で見ていく。

Creating chances

ウイングプレイ

ガスペリーニのチャンスを作る方法の主な源はサイドエリアだ。前述のとおり、ウイングバックが常に最大限横幅を維持して、ロウクロスもしくは切り返し出来るエリアから片方のサイドか相手のディフェンスラインの裏のスペースでチャンスを見出そうと試みる。注目すべきことはアタランタはそのシュートの難しさから滅多にハイクロスはしない。代わりに空中戦よりゴールの確率が高く、ワンタッチでシュートでき、よりコントロールの容易いロウクロスか切り返しに重点を置いている。ウイングバックに出来るだけ時間を与えるために、アタランタは素早くサイドチェンジをする。たいていハーフスペースにいる攻撃的ミッドフィルダーにパスして相手のサイドバックを引き付けてから突進してくるウイングバックに展開する。下の画像は頻繁に見られるシーンの一例だ。

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ウイングバックを良いポジションに位置させるためのもう一つの方法は下の画像のようなコンビネーションを利用することだ。Toloi がCristanteにパスしてウイングバックのCastagneがCristanteが開けてくれたスペースに走りこむ。

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一方のウイングバックがボールを持ってペナルティーボックスにクロスを上げる時、逆サイドのウイングバックはペナルテイーエリアに入っていきファーポストのエリアを攻撃する。昨シーズンAndrea Conti はガスペリーニが求めるウイングバックの役割を完璧にこなした。リーグで8ゴールと5アシストを記録しミランへの移籍を勝ち取った。下は右ウイングバックのHateboerがクロスを送って左ウイングバックのGosensが容易にゴールしたシーンだ。

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中央でのコンビネーションと中盤からのラン

アタランタのチャンスは前線3人もしくは駆け上がってきたミッドフィルダーとの中央でのコンビネーションからも作り出されている。Alejandro GomezやJosip Ilicic、Bryan Cristante のような選手達のクリエイティビティやパスのクオリティがこの崩しのカギになっている。ストライカーはたいてい基準点になり周囲の選手達と連携するように試みる。リーグで9ゴールをあげたCristanteのこの作戦の中での素晴らしい点のひとつは何度もペナルティーエリアへのランを繰り返し、ストライカーを追い越してスルーパスに合わせることだ。下の画像の中でPetagnaがゴールを背にしてボールを受ける。CristanteとセントラルミッドフィルダーのFreulerの両方がPetagnaを追い越していく。PetagnaはCristanteにスルーパスを出しCristanteの素晴らしいクロスをFreulerが無人のゴールに押し込んだ。Freulerは今シーズン5ゴール、ミッドフィルダーのMarten De Roonは3ゴールをここまであげている。こういった深いエリアへのランニングによる攻撃参加によって彼らは重要な役割をチームで担っている。

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GomezとCristanteとのコンビネーションは恐らくアタランタのシーズンを語る上でのメインポイントだ。Cristanteは完璧なタイミングでペナルティーエリアに走り込みディフェンスラインの背後をつく瞬間を予測する。下のシーンでGomezが浮き球で走りこむCristanteにパスをして強烈にシュートする。

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下のシーンでGomezはドリブルで前進して,白で示されたインテルセンターハーフSkriniarを引き付けている。GomezはCristanteにパスしたあとそのまま走り込み、CristanteがSkriniarが出てきたことによって空いたスペースへスルーパスをGomezに出す。このコンビネーションは2人の攻撃的ミッドフィルダー(ワイドフォワード)の距離感の近さによって成り立っている。彼らの素晴らしいコンビネーションとまたストライカーのポジションによって、アタランタのセントラルポジションの3選手が相手のセンターバックと対面して、相手に脅威を与えている。

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中央でのコンビネーションプレイとサイドからの脅威によってアタランタは対戦したくないタフなチームになっている。彼らは複数の異なる方法によって痛めつけてくるからだ。またアタランタは全ゴールの25パーセントに及ぶ14ゴールをセットプレーからあげている。ガスペリーニはどの角度からも脅威を与えてくると言っていいだろう。

 

要約

ガスペリーニアタランタでの過去2年の仕事は、限られた戦力、他のイタリアのビッグクラブと比較した財政状況、そしてなんといっても戦力が流出していく中ではとても優れた結果と言える。Roberto Gagliardini (インテル), Franck Kessie (ミラン) and Andrea Conti (ミラン) はすでに売却され、Mattia Caldaraはこの夏にユベントスへ移籍するだろう。 彼らは皆ガスペリーニによってチャンスを与えられた選手達だ。ガスペリーニはユースの選手や恐らくイタリアで最も優れたスポーツディレクターGiuseppe Sartoriが連れてきた無名の選手によって彼らの穴を埋めている。そして驚くべきことに今シーズンも同様にすばらしい結果を残している。ガスペリーニは2年連続でアタランタをヨーロッパの舞台へ導こうとしている。そして彼はユニークなスタイルのフットボールアタランタファンだけでなくそれ以外のフットボールファンをも魅了している。ベルガモでの彼の指揮は続く。